青年海外協力隊に立ちはだかる学位の壁を越えるには

Gandhi(ガンディー)@南米エクアドルのコーヒー農園です。

突然ですが、皆さん。この問題解けますか?

物理学科これは、僕が大学3年生の頃に受けた期末テストの問題です。
(写真提供:I氏)

物理学科ではこんなことを勉強していました。

大学で量子力学を勉強していない人は「?」って感じでしょう。
当然です。知らない知識なのですから。

ところが、みなさんだけではありません。

実は今の僕も、問題の意味すら理解できません。

僕は物理学科を修士まで出ています。Master of Scienceです。
もちろん、この授業も単位を取っています。

しかも、ちょっと感じが悪いことを言うと、評定はほとんどAとA+しかとったことありません。(今更無意味な自慢ですが、学部時代の成績は学科6位/70数名中でした。自慢するくらししか価値が無いので自慢します。。)

なのに、10年後には問題の意味すら分からなくなっている。

日本の高等教育はこれでいいのか、って思いますよね。
僕もエクアドルに来て、この疑問に何度もぶつかっています。

でも今は、日本的な大学の在り方もそれはそれで良いところもあるな、と思っています。

「職業」=「学位」なエクアドル

エクアドルでしばしば受ける質問があります。

「君の職業(Profesion)は何?」

日本人なら、会社員とか公務員とかそういう言い方をしますよね。

でも、エクアドル人は違います。

エクアドル人たちが期待することは、Ingeniero en~(~技師)とかArquitecto(建築士)とかEconomista(経済士)とかです。

これって、全部大学が認定する学位なんです。

そして、仕事をする上で、その分野の学位を持っている人の意見や発言がとても強い。

食品の話をしているときに、食品技師が間違ったことを言っていても、僕は指摘できません。
指摘しても、誰も信じてくれません。食品関連の学位を持っていないからです。

他の食品技師に確認しないと前に進めません。

以前、エクアドルの食品成分認証機関で調べてもらったデータにありえない間違いがありました。

(製品中の全カロリー値)<(油分のみに含まれるカロリー値)と表記されていたんです。

僕は指摘しました。
油分だけのカロリーが全カロリーより大きいとは何事だと。

しかし、みんな理解してくれませんでした。

なので、食品技師にその話をして、その人から「間違ってる」と言ってもらったことがあります。

つまり、職業の専門性は大学でしか学べないと認識されているんです。

それだけ、学位=職業が当たり前なんです。

世界標準はエクアドルの方?

これ、エクアドルだけではなく、世界的に見て多数派は学位=職業だと思います。
特に欧米の文化圏はそんな気がします。

分析機器の営業をしていた前々職では、海外販社の営業スタッフのほとんどが化学とか分析学とかの学位をもっていました。日本人の同僚がほとんど文系だったのとは対照的です。

学位の壁に悩まされる協力隊員

会社員をしていた頃は、海外営業とはいえ日系社会のフィールドで仕事をしていたので特に思いませんでしたが、現地のルールを全面的に押し付けられる協力隊活動においては、学位の壁が非常に高く立ちはだかります。

専門的な仕事の経験はあるのに、学位が無いから専門家として認識してもらえない。
話に説得力が無くなる。

結局現地の専門家のいう事がすべてとなる。

などなど。

コミュニティ開発とか、環境教育とか、青少年活動とか、学位と活動が結びつかない職種は特に大変です。

日本の教育システムが間違っているわけではない

ここまで来ると、日本の大学で学ぶ意味が疑わしくなります。
専門学校で特殊技能付けた方がいいんじゃないかと。

でも、僕はそうとも思っていません。

日本社会では、仕事を始めてから専門性を学ぶことができるからです。

もともと終身雇用が前提だったので、仕事をしながら学ぶことが許されるんです。

日本企業でちゃんと仕事をしていれば、欧米のプロフェッショナルとも一緒に仕事できるくらいには成長できると思います。

だから、大学では意図しているのか分かりませんが「新しい事を学ぶ方法を学ぶ」授業のやり方をしているように感じます。

つまり、大学卒業は「新しい事を学べる素養があるか」の指標でしょう。
これ、結構大事な気がするんです。

僕の見た限り、エクアドル人は仕事の能力が経験年数に比例していない。
仕事をしながら新しい事を学ぶということをしていない。

知識は、誰かに教えてもらわないと習得できないと思ってしまっている。
知らない知識に対しては触れないようにしている。自分がやる仕事ではないと判断してしまう。

非常に勿体ないし、これではイノベーションを起こせないと思うんです。

そこに、日本人が活躍できる隙があります。

日本国外で活躍するには

職業と学位が一致しない場合、肩書は一切通用しないので、ひたすら説明するしかありません。説明と一緒に、実際に自分ができる事を見せる必要があります。

今の活動先で、コーヒーについて勉強をしました。
エクアドルの気候について勉強しました。スペイン語も勉強しました。

それらの知識を組み合わせて、マナビ県の気候特性によるコーヒーの特徴を考察しました。

そして、何度もその特徴とセールス方法を説明しました。
口で言ってもダメなら、書いて伝えました。

そうしているうちに、同僚に「コーヒーの学位を持っている人」だと勘違いされるようになりました。

エクアドル人よりもうまくマナビ県のコーヒーの説明をすることができるようになり、任地の農家さん向けに営業セミナーを開くこともできるようになりました。

今は、プレゼン資料作って同僚に校正を頼んでも、ざっと目を通されるだけで何も言われなくなりました。修正してくれないのはちょっと寂しいですが、プロフェッショナルとして認められるようになった実感があります。

エクアドル人だけの会議で意見を求められることも増えました。

初対面の人にはまだまだ「インターン生」扱いされていますが、1年以上仕事をしている同僚からは既にプロフェッショナルとして認識してもらえるようになりました。

ボランティア活動の目的は農家さんの収入向上なので僕自身がどうみられるかは本来重要ではないんですが、やっぱり認めてくれないと辛いし、認めてもらえると嬉しいです。

学位と職業の壁で悩んでる人がいれば、今一度日本の大学で学んだ者が持つ「吸収力」をうまく利用してみてはいかがでしょうか。

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